「そこの看板に『日曜大工もお世話しますから』って書いてあるでしょ。大丈夫、こっちでできることであればするっていうこと」
明治時代から続く板橋材木店で、現在は三代目社長の初郎(はつお)さん。かつては街中にも多くの材木店があり、それを利用する工務店や大工さんが大勢いたというお話を聞き、今とは違う仙台の街並みを想像しました。昔は木を置いていた敷地も、今ではビルを建てて不動産収入を得るなど、時代の変遷に合わせながら現在も材木店を続けられています。お店の看板には「日曜大工のお手伝いします」とあり、建築ダウナーズでも取材をしてからここ数年、継続的に木材を購入している材木店です。市内の配送料は1000円(取材時)。

話し手:板橋初郎さん(以下板橋) 聞き手:建築ダウナーズ(菊池、千葉、吉川)
◯街中に多くの材木店があった
吉川:以前、木材を購入させていただいた時に、板橋材木店さんが古くからお店をやられているとお聞きしていました。いつ頃からになりますか?
板橋:私で3代目なの。明治だね。ひいおじいさんの代から。会社としては昭和だけど。
千葉:では法人化する前からやっていたみたいなことですか?
板橋:そうだね。
吉川:この場所でやられていたんですか?
板橋:その頃は市民会館の向かいだったんだよね。戦後こっちに移ったんだね。その爺さんの代は、馬車でね。愛子に1回運んでおいて、そこからまた仙台に持ってきたみたい。
一同:へえ〜。
板橋:そこの土地は、5年ぐらい前には売ったけどね。愛子の土地は。
菊池:自分の土地の木を伐ってたってことですか?
板橋:いや、そこは木を置いておくところ。どこから持ってきたんだろう、愛子の奥の方だろうね。山形から持ってくるわけではないだろうから。
千葉:木流しとか、川で木を流してくるとか、そういうわけではないのでしょうか?
板橋:馬車だと思うね。木流しというのは、わかんないね。
吉川:その時に運ばれてた木っていうのは、丸太(原木)ですか?
板橋:そうですね。私は丸太の製材の記憶はないんだけど、製材機、丸太をひくような製材ではない機械は置いてたんだけど、台車でうんぬんでは、なかったと思うんだけど、うん。
吉川:そこの愛子の場所は、だんだん使わなくなったのでしょうか?
板橋:あそこはね、国道に面していたんだけど、対して広くなくて。友達に売ったんだね。そこはうまく川まで道路を広げてね。今は、ずいぶん広くなってんだ。倍以上の土地になった。
菊池: 広瀬川っていうことですよね?
板橋:そうですね。
菊池:その時の木っていうのは、仙台に運ばれてきて、何に使われることが多かったですか?
板橋:私はわかんないんだなぁ、爺さんの時のことは。なんて言ったっけな。県木社とかなんとかっていう会社で、みんなそこで働いた後、材木屋を始めたんじゃないのかな。うん、そうだと思います。
吉川:県木社っていうのは何の名前ですか?
板橋:宮城県木材の、なんだろうな。
吉川:県の団体なんですね。
(板橋さんが書棚から本を持ってくる)

板橋:みんな昔は、本を作るのが流行りで。これは守屋木材、坂下交差点のところにある材木屋さんなんだけど、ここは本当に大きくて、手広くやってるんだけど。
(本を見せていただく)
吉川:77年の軌跡、すごい。
板橋:あとこれは古川の株式会社チバミンっていうところの社長が書いたやつ。あとこれは峰岸さんって人のやつ。これは今のね、住宅会社。ここに載ってるかもわかんないけども。
(本の表紙に「ダブル70年記念」と書いてある)
吉川:「ダブル70年記念」...って何ですか?
板橋:わかんない(笑)
吉川:守屋木材さんとかも、もう今だと80何年とかなんですかね。
板橋:ここもここも古いです。
吉川:かっこいい本ですね。
板橋:その頃は、100社くらいあったんじゃないのかな。
菊池:100社!
吉川:いつ頃でしょうね。
(見せていただいた本の発行年を探す)
吉川:昭和42年って書いてある。
千葉:すごい。経営方針まで書いてある。「堅実主義」。
吉川:あ、これそっか、全部にモットーみたいなのが載ってる。
菊池:この協会に入ってる木材の会社が、全部載っている?
板橋:だいたい入ってたんだね前は。今も協会自体は、残ってるんだけど。10社ぐらいしかなくなったかな 。
菊池:この協会っていうのは何のために入るんですか?
板橋:まぁ...親睦だね(笑)
一同:へぇー。
板橋:もうこんなので役立つんなら、持って帰ってもらっていいですから。
(記念誌などの本一式をダウナーズに渡しながら)
菊池:え?いやいや貴重なものだと思うので。
板橋:もうさ、昔のことを振り返ったりしないから。
一同:(笑)
千葉:素敵です。
板橋:これもちょっとだけ読んで、これは、全然読んでない。これなんかも別に読んでないよね。欲しくないのに寄越されるんだからさ。
一同:(笑)
吉川: この会社さんたちは付き合いが長くて、どこもよく知ってるんですか?
板橋:うん、まぁこういう協会に入って、みんなこの人たちは入ってるよ。
菊池:木材会館なんていうのもあったんですね。
板橋:今も残ってるかも分かんない。
吉川:板橋材木店さんもこれにも載ってるって事ですか?
板橋:うん、載ってますね。
***
菊池:これは展示会というと、競りみたいな感じ?
板橋:週に1回とか2回、競りをしてたんだね木材の。
千葉:どこら辺でやってたんですか?
板橋:木材市場と...。
菊池:今の木材市場ですか?
板橋:そう。あと、そこの社長が、今この守屋光雄の息子が社長だから。
吉川: 仙台木材市場は、市とか県とかの何かではなくて、会社ですか?
板橋:そうそう。株式会社。それと宮城県の組合のセリもあったんだ。木材市場と組合のと、あとここが伊藤一郎さんっていう、伊藤さんの市場と。3つあったの。曜日が違ってね。それぐらい活気があったんだよね。昔は3つ市場があったんだよ。
吉川:それはいつ頃まであったんですか?社長さんの時もあった?
板橋:あったね。20年前に、その宮城県なんとかっていう、バイパスのとこにあったんだけど。それとあと、もう少し市内の方の近くに伊藤材木店というとこで、そこでも競りあったんですよね。3カ所で。派閥みたいにあって。どこの市場だ?って。3つも4つも行く訳ではないから。
菊池:じゃあなんか3つ市場があるけど、どれかにしか入ってなかったりですか?
板橋:付き合いで3つ全部に入ってるけど、主には、ここで買うとか。みんな別れていて、派閥みたいなのがあったね。そして、その金清って書くんだけど、金清木材が先になくなって。次に木材産業協同組合。最初に伊藤材木店ってのがあって、一番最初にできたの。あと仙台木材市場。みんな紐付きでなくて自分たちで株式会社として。国とか市のものではない。
吉川:その3つのそれぞれの市場は、産地は違うんですか?
板橋:産地はね、だいたいは岩手。
一同:へー。
板橋:宮城県は、あんまりないんだね。
菊池:それはどうしてですか?
板橋:この通り仙台には製材所もないし、やっぱり木が多いでしょ岩手の方が。製材所の数も多いし。
吉川:今も広葉樹とかは、岩手はすごく多いって聞きました。
板橋:うん、そうだね。こっちはほら、結局は、住宅に売る杉とか松とか、あとは外材とかが中心で。広葉樹の注文っていうか「こういうの欲しい」って言われると、下向いてしまうんだね。
一同:(笑)
板橋:広葉樹専門の店も前はあったんだけど、やっぱりそれだけでは、なかなか需要がないからさ。
吉川: 需要が減っちゃって、あんまり取り扱わなくなった?
板橋:ネットでも売ってるもんね。
吉川:板橋材木店さんは、昔から広葉樹はあんまり扱わなかったんですか?
板橋:いや、木材市場で頼むね、その場合は。それで岩手の方からね。あとは名木屋さん。東京の会社もあって、それも仲介はするけどね。
菊池:この間、ダウナーズで広葉樹の在庫をお聞きした時に、確認していただいたのは、名木屋さんですか?
板橋:栗とか桂だっけ?
菊池:栗です。
板橋:それは木材市場で。岩手の木材だね。
菊池:じゃあ、宮城では、そもそも切ってないんですか?
板橋:ないわけではないだろうけど。
千葉:あんまり市場に出回る感じではないっていうことですか?
板橋:うん。結局は、岩手の製材所から持ってきたやつを競りで買うという感じで。八幡町の宮城十条木材っていうところがあんだけど、そこは白石で製材してるから近辺の材を挽いてるかもわかんない。
吉川:昔八幡町に住んでたんですけど、近所に佐勘材木店さんっていう所もありました。
板橋:うん、でも今はもうアパートになってるでしょ?
吉川:なってました。
板橋:生協の脇ね。知り合いだけどね。それからその向かいに、川上材木屋、小柳川材木屋ってあったんだ。
吉川:えーそんなに。
板橋:うん、八幡町にそのくらいあって、でももうやめた。
千葉:今頂いた本を見てると八幡とか小田原とか結構多いですよね。
板橋:こういうとこ(青葉区立町)でやってるのが珍しいのさ。市街地でね。
千葉:戦前は、市民会館の向かい側ってことですけど、戦前はそこら辺にも材木屋さんは、結構多かったんですか?
板橋:今ちょっと思い出せるのだと、佐藤材木屋と、須藤材木屋とあとその先にもあったあと裁判所前にもあったり。 まあ結構多かったんだよ。材木屋。
***
菊池:材木屋さんには、どういう需要が多かったんですか?家を建てるとか?
板橋:うん。でも今は結局プレカット。我々の手を通さなくても木材でも何でも動くから。
吉川:工務店とか大工さんとかが買いに来たり、そういう需要がたくさんあったのでしょうか?
板橋:うん。でも今は少ないから大工さんたちとか工務店。みんなほらハウスメーカーの下請けみたいになってね。でもそうじゃないと仕事を続けるってのは大変さ。自分でね、お客さんと契約して。いろいろニーズもね、高いし。お客さんの方も詳しいし。それに追いついていけなくなったんだ。私だって売っててもよくわかんないんだからさ(笑)
一同:いやいや(笑)
菊池:材木屋さんを通さないで家を建てるっていう場合は、どういうことになるんですか?ハウスメーカーが持ってる木を使うんですか?
板橋:ハウスメーカーが持っててそのままプレカット工場という場合もあるし、住友林業とかは自分で山を持ってるしとか、色々だね。
◯材木店の仕事と大学専属の大工さん
吉川:近頃の板橋材木店のお客さんっていうのは、全部工務店さんですか?
板橋:うん。でも工務店も少なくなったね、大工さんとかね。個人でやってる人も少なくなったし、よく動いてるようなもんだ。
千葉:今は、どういう人が買いに来られる人が多いんですか?
板橋:会社だね。今うちで多いのは、会社で、大工さんが何人もいて...家を建てるんじゃないよ。自分で持っている店舗とか倉庫とか、そういうところの工事を切れ目なく仕事しているところがあるから。内装の仕事とか、なんでもやれる人たち。そこでは、店舗からテナントが出ていって新しい借主を入れるってなっても、全部自分のところで工事をするわけ。まぁ不動産の人だね。
菊池:そういう業態が多くなっているということなんですね?
板橋:たまたまそこの人と付き合いがあるからということだね。昔から作ったり、削ったり、切ったり。
菊池:なんかちょっと基本的な話になってしまうかもしれないんですけど、今現在されているお仕事の内容、今もちょっとちらっとなんか木を挽いたりということもあったんですけど、主にどういうことをされていますか?
板橋:木を削ったり、切ったり。今下でやってるのは、プレーナーかけたり。
(インタビューを行った2階の事務所スペースには、1階で板橋さんの息子さんが木材をプレーナー(電動のカンナ)にかける音がずっと聞こえている。)
菊池:今やっているのは、何用の木材の加工なんですか?
板橋:大学から頼まれたやつなんだけど。 赤松と杉かな。寸法で。前は東北大学からの注文も結構あったんだけど。大学には機械も揃っていてね、各学部に大工さんがいたんだよ。結構買ってもらってたんだけど、今は、それを無くしたんだよね。
菊池:それは大学の設備とかを修理するって感じなんですか?
板橋:うんうん。今は、東北工業大学に買ってもらってるの。今削ってるのもそう。
菊池: 別に建築学科の人とかじゃないんですよね?
板橋:うん。 施設管理課とかなんとかって。
菊池:意外ですそれは。
板橋:少し前は、溝がついた材料で、床に使ったりするやつ。それも工業大に、随分たくさん買ってもらったんだ。
吉川:大学が直接買うと、誰が工事するんですか?
板橋:工業大はね、大工さんがいるんだよ。
吉川:へー。
千葉:技術職員みたいな、工房があるんですか?
板橋:あるよ。
千葉:そこを管理されてる方がいる?
板橋:そうそう、いるよ。
吉川:東北大にも、そういう方がいたけど今はいなくなった?
板橋:そう、今はいない。
菊池:知らなかったです。
***
吉川:僕たちみたいな人が、突然こうお邪魔して、木を買わせてください!みたいなのは、あんまりないですか?
板橋:ないこともないけどね。まぁ、こっちもね、愛想も良くないしさ?(笑)
一同:いやいやよくして頂いてます(笑)
板橋:あまり面倒なのも来られたら、これはしない方がいいなと。個人の人は、難しいからさ。
菊池:いつも頼んでくれるわけじゃないとかもありますもんね。
吉川:じゃあ家で何かDIYをしたいみたいな人が来られたりするのはあんまり?
板橋:それはないよ。そこの看板に「日曜大工もお世話しますから」って書いてあるでしょ。それは別に大丈夫。こっちでできることであればするっていうこと。
吉川:ありがとうございます。
***
菊池:なんか市場とかで木を買い付けたりするんですか?杉とかとか松も?
板橋:赤松が高くなったり、米松が高くなったり。杉も結構。全然入ってこないと思ったら入ってるんですね。どういうわけだか、ソ連の赤松だとかさ。どういうルートだかわかんない。一時よりは下がって、1回上がって少し下がって、前の値段にはなんないんだよね。
菊池:ウッドショックになる前の値段ってことですか?そこまでは下がらない?
板橋:うん。
吉川:値段が上がることは、材木店さんにとってはいいことだったりするんですか?
板橋:うん。いいけれども、売れなくなるけどね。
吉川: 極端に上がると買う人も高いから買わないという。
板橋:うん。
菊池:じゃあ、今はその輸入材の松とかも販売してるんですか?
板橋:言われればなんでもやるよ。
(2023年、仙台市青葉区、板橋材木店にて行ったインタビューから抜粋したものです)