「逆に整備し過ぎないということも考えています。例えば、立ち枯れている木を倒さないで残しておくと、生き物の住処になります。鳥がやってきたりするんです」
宮城県丸森町の刈田路代さんは、メガソーラーの建設や、台風19号の被害と森林環境との関連性に興味を持ったことをきっかけに、Woods and People MARUMORI(以下ウッピー)という山の管理をしながら林業について学び合う団体を作り、自伐型林業の取り組みを始められた方です。 自伐型林業は、委託を受けた林業家がその都度訪れた森林の木を伐るといった採算性や効率性を重視した方法ではなく、季節を限定した兼業による施業かつ、自分たちが日頃管理する森の木々を自ら伐採することで、森林と長期的な関わりをもち、山に負担をかけず、自然環境を改善していく林業として近年注目されています。

話し手:刈田路代さん(以下刈田) 聞き手:建築ダウナーズ(菊池、千葉、吉川)
◯自伐型林業とは?
菊池:自伐型林業について調べたりしたのですが、一般の自伐型林業とウッピーの自伐型林業に、もし違いがあったら教えてください。
刈田:自伐型は専業ではなく兼業がいいと言われているんですが、もともと、自伐林家と呼ばれる、代々、家で山を切りながら、農家もされていたりとか、昔からやられていたものなんですよね。なぜかというと、一年を通して伐り続けるというのは、山に対しても負荷がかかることなんです。なので、山に入れないときは農業で生計を立てて、山の時期に木を伐る。それがずっとやられてきた取られていた方法で、無理がない。皆伐業者とか現代みたいに山だけでやろうとすると、皆伐する必要がでてきてしまう。
千葉:採算を取ろうとするとそうなってしまうんですね。
刈田:そうですね。考えれば納得、という感じではあるんですけど。兼業でやるのが自然かなと思っています。
吉川:ではウッピーの皆さんも基本的には兼業なんですね。
刈田:それは一概には言えなくて。今の所、実は、一般的な皆伐をしている会社の人も入っています。
菊池:そうなんですね。そういう方は会社のやり方に本当は疑問があったりするのでしょうか?
刈田:自伐をしたいと思いながらもお仕事されているとか、将来的に山に入って自伐型林業を実践されたいという気持ちがある方も所属しています。山のお仕事をすることがすごく好きな方で、2名ほどいます。
菊池:自伐をしたいとか、山に対する自分の考え方があっても、現実的な問題で、皆伐をしている会社で働くという選択になることもありますよね。
刈田:中嶋健造さんが「皆伐いかんぜよ」と言っていると、ウッピーにも実は、皆伐を仕事にしている人もいるですけど、と思ったりしています。
千葉:山に入るときに教えてくださる方は、普段は仕事で皆伐などをされている方達ですか?
刈田:そうです。いないときは無理して太い木は切らないようにしています。
千葉:僕も昔、牡鹿半島で行われたワークショップで一度やったことがあるんですけど、めちゃくちゃ怖いですよね。
刈田:エンジンチェーンソーだと音が怖いですよね。基本的に、一人きりで入らない方がいいと言われています。2、3人が多いですかね。慣れてきたら一人でも大丈夫だよ、と言われています。
菊池:危険があるのは道具でしょうか?それとも倒れてくる木ですか?
刈田:どちらもですが主に木ですね。木自体が細くても、当たったら死んじゃったりするんです。
菊池:山に入る頻度はどのくらいですか?
刈田:季節によるんですけど、9月は4日は確実に。10月から12日間。11月も12日間の予定でいます。
菊池:兼業の話で、農業をやらない時期ということは冬の時期ですか?
刈田:雪深いところとかは1、2月は休みだと思いますが、そうでなければ、秋冬です。
千葉:木が乾燥している時期なのでしょうか?
刈田:そうですね、乾燥具合は季節によってかなり違いますね。春だと、ビショビショっていう感じですね。伐ったら水が出てくるくらい、みずみずしいというか。
吉川:親林での活動の50年のスケジュールなど、長期的な計画があれば教えてください。
刈田:親林で50年というのはまだわからないんですけれども、ウッピーの活動としての長期ビジョンはこれですね。(資料)山の長期ビジョンとしては、10年に一回2割間伐、というのがあります。この範囲、2割除伐。終わったら隣に行こう、というのを繰り返していく。交付金をもらって、1ヘクタールいくら、という。生活はできない程度ですが、燃料費とかをいただいて、やっています。交付金を得るのにも事務処理が大変だったりして、材を売ったお金で活動したいという気持ちがありますね。
吉川:ここに書いてある「学び合う場を作る」というのは親林での作業とは別の活動なんですか?
刈田:これは、整備をしながら学ぶ、というセットの意味です。実は今年、交付金でユンボを買うんですが、自分たちで道を作りながら学んでいこうと考えています。ユンボとか、木を牽引する道具とか。道具を準備しつつ、実践しながら学ぶ場にもしていければと考えています。
菊池:人が集まらないと出来ない作業も多いと思うんですが、この活動自体がコミュニティを作っていくような役割も持つように感じました。
刈田:一人一人やりたいことはあるので、集まってやりながら、情報交換をして、そしてまた自分のフィールドに帰っていくようなイメージかもしれません。
千葉:みんなご自分の山を持っているんですか?
刈田:持っている方もいますが、全員がそういうわけではないですね。メンバーの一人は親林でのイベントを企画しています。9月10月に一回ずつ。9月は火おこし体験です。災害から身を守る意図で、火起こしができれば、緊急時にも、煮炊きができるよねということです。あとは山から木を運び出したりとか、そういう体験をしてもらうことも企画しています。体験料をもらって活動費にもしています。山の活用の一つとして、そういったイベントをやることも、ウッピーでは大事にしています。
菊池:主催としては、ウッピーでやるけれども、このイベントの場合は、そのメンバーさんが中心になっているんですねこのイベントも斎藤さんのお父さんの山でやられているんですか?
刈田:そうですそうです。森の整備を行うのが基本ですが、メンバーそれぞれの関心が元になった活動もあって、渉くんの活動は、ウッピーとしてもすごく重要だと思っています。
菊池:山を整備している中で、気をつけていることはありますか?
刈田:そうですね。ただ整備するというのではなくて、人が入っていく森だと思いつつ整備しています。逆に整備し過ぎないということも考えています。あんまり綺麗にし過ぎない。
菊池:し過ぎないというのは?
刈田:人為的な感じにはしないように、自然公園にはしないようにという感じです。例えば、立ち枯れている木を倒さないで残しておくと生き物の住処になります。鳥がやってきたりするんです。
菊池:そういう役割もあるんですね。
刈田:通り道の近くで、危ない木は倒しますが、時と場合によっては残すということをしています。
千葉:どのようにして伐る木を選ぶのでしょうか?
刈田:伐る木を選ぶのは、本当に難しいです。枯れていて細くて、明らかに伐ったほうがいいねというのは分かりますが、混んでいる場所に二本の木が生えていて、似たように見えるときに、どっちを伐るのか?というのは、すごく難しいです。あとは、道のすぐ近くに生えている木と、離れている木、どっちを伐るのか、みたいなときもあります。道のすぐ近くの木はあえて残して、根っこで道を守る。でも根張りがなかったり、根っこが弱っているときもあるので、そうすると迷います。
吉川:道を作る時も単純にスペースが広いとかではなくて、水や根のことを考えながらルートを決めていくんですね。
刈田:そうなんです。橋下先生という、自伐型林業の作業道のレジェンドみたいな方がいるんです。その方に指導してもらって作業道を作っています。道幅も2.5メートルまでと決まっています。道幅が大きくなると、伐り高が高くなってしまい、高すぎると道が崩れてしまう。広くすればするほど、削る土の量が増えて、それを必ず下に落とさなければいけない。盛り土も大きくなると災害の原因になります。道の幅は、すごくシビアなんです。
◯木の種類
菊池:伐採する木はどういう種類の木なのでしょうか?
刈田:多くは杉です。
菊池:杉は斎藤さんのお父さんの、前の代の方が植えたものですか?
刈田:おじいちゃんなんですかね。80年代の木がありました。
千葉:わかるんですね。年輪とかで知ることができるのでしょうか?
刈田:森林簿というのがありまして。記録があるんです。ウッピーが活動している「親林」の森林簿は、一つの住所ですが、9つに別れています。斎藤さんのお父さんの山が、さらに9つに別れているということです。森林簿にはその9つに別れた山の植生とか、何年生の杉であるとかが、書かれています。
千葉:めちゃめちゃすごいですね。
吉川:その記録を作ることは一般的ですか?
刈田:これは県の方で作っているんです。
菊池:僕も最近知ったんですが、祖父が三つくらい山を持っていて。この間見に行ったんですけど、もしかしてうちの山にもこういうのがあるのかな。
刈田:必ず森林簿はあると思います。
(見せていただく)
菊池:アルファベットで分類されていますね。Jは人工林なんですね。Sはなんだろう、育成単層林。Tは天然林。林齢とかもある。山の高いところから低いところへ縦に分けられているんですね。等高線とは違うのか。
刈田:集落が道沿いにあるので、道からすぐ行けるところに杉が植えられたようです。赤松とか。親林の場所は、ここ(スローバブックス)から15分くらい車で行ったところですね。
千葉:名前をつけていらっしゃるんですね。「もういいか岩」、「眠り岩」など面白いです。これは昔からそう呼ばれてるんですか?名付けたんですか?
刈田:名付けました。なんか、テンションあげようと思って
一同:笑
刈田:眠り岩は、巨大なんですけど、人が眠っているまぶたみたいに見えます。もういいか岩は、かくれんぼしている時に、石の姿がかくれんぼの鬼のように見えて、名付けました。
菊池:森林簿はどこで手に入れますか?
刈田:大河原地方振興事務所って大河原町にあるんですけど、そこで写しをいただくことができます。誰でも見ることができます。ただ結構境界がわからないらしくて。
菊池:何か境界は目印があるんですか?
刈田:境界杭があります。あとは、隣同士で申し合わせたとか、変わった木が植わっていたとか、これまでなかった木が植わっているとか、いろんなことがヒントになりますが、どこでも境界の問題は大変みたいですね。
吉川:この親林の広さはどのくらいですか?
刈田:5.7ヘクタールで、活動するのはこの手前側の半分くらいですね。まずはこのあたりの杉を切ります。
今年は杉が多いですが、広葉樹も必要に応じて切ります。
菊池:売値が2倍なんですよね?
刈田:チップの場合はそうです。でも、チップとしては売らないでいようと思っていました。なので、材の出口については悩んでいます。広葉樹は根を深く張って山を守るという機能も高いし、むやみにチップにせずに材料として製材する方法を考えています。広葉樹には、いろんな樹種があって面白いなと思うので、製品の作り方とか、丸森独自の商品を作ったりとかしていきたいです。
吉川:建材の話についてお聞きしたいんですが、例えば、今年10月から間伐をされる時に切るのは杉が多いのでしょうか?広葉樹も切りますか?
刈田:杉の方が多いですね。なぜかというと、今は杉がある程度植わっているんですが、将来的には針広混合林にしていきたいので、今よりも広葉樹を多くしていきたいんですね。なので、生えている広葉樹を育てたり、杉を切った空間ができたところに、植えたい木を植えてみる。それを広葉樹にしてみたり、いまよりも割合を変えたいんですね。
吉川:今も広葉樹はありますか?
刈田:結構クリは生えていますね。
吉川:クリは家具や建材にも多く使えますよね。
菊池:広葉樹を増やしていきたいのはどうしてですか?
刈田:自然に戻していきたいということですね。杉は人間が植えたものなので。杉も必要なところには必要ですけど、山としてみると、広葉樹も自然な形で持続できれば、ゆくゆくは人がいなくなっても、と思います。
菊池:杉は結局管理する人がいないと山がダメになってしまうというのを聞いたことがあります。
刈田:ここ以外にもう一箇所、木を伐っているところがあるんですが、はじめそこは本当に密に杉が生えていました、そこに入ると急に暗くなるんです。真っ暗。今年、余裕があって、少し間伐に入ったんですけど、直後からすごく光の感じが違うし、土もすごく乾いてきて、土の感じもすごく変わりました。そういうのをみると、間伐していきたいな、という風に思います。
吉川:そうすると最初の頃はどうしてもA材*は、少ないのでしょうか?
*A材 :木材を品質や用途によって分類した時の通称で、A材はその中で最も品質の高い材。A 材は直 材で建築用材、家具材など市場性が最も高い質材、B 材は小曲がり材で土木用材など、C 材は大曲がり材で集成材、合板用材、チップ材(製紙用・エネルギー用)など、D材は伐 採・造材の際に発生する端材でチップ材など利用価値が最も低い質材のことをいう。
(出典:https://www.city.saga.lg.jp/site_files/file/usefiles/downloads/s36827_20130704045514.pdf)
刈田:そういうのは全然ないんですね。悪いものから伐っていくので。虫が入っているとか。なのでそういう場合はチップという出口が役に立つ。ただ、安いので。片付けついでにという感じだと思います。あと、そういうのも薪にはできるので。
菊池:地元でチップの他に製材してもらっている製材所などはありますか?
刈田:地元の小野材木店さんは広葉樹も製材してくれます。杉とかも多いです。
菊池:僕らが前にお話をお聞きした製材所では、工場の規模が大きいのもあると思いますが、入ってくる頻度の少ない広葉樹は採算が合わないので製材をやっていないと聞きました。本当に大きいもので、天板になるようなものとかだけやっていて。他は、基本チップになっているかと思います。
刈田:小野材木店さんはいい人なので。採算が合わなくても受け取ってくれたのかな?
菊池:今お話しした製材所は生産ラインができているような大きい工場なので。確か7割ほどがチップになっていると聞きました。
吉川:見せていただいたときに立派な広葉樹が積まれていて。でも、個別に対応していると手間暇がかかるし、あと需要の問題もあるのかもしれません。
菊池:あと多分、規格が合わなくて生産ラインにも入らないとか?
千葉:ラインには大きいところもあったけど、オーダーされてから作るから時間がかかるんじゃないかな。乾燥期間も考えると。
菊池:確かに乾燥の期間も必要だね。
千葉:小野材木店さんは何人くらいでされてるんですか?
刈田:ほぼ社長さんお一人で、家族経営で。
菊池:じゃあほんとに地元の家とかを作るのに木を卸したりしているのかもしれないですね。
千葉:従業員を何人も雇うと、仕事の種類も変わりそうです。
吉川:小野材木店さんはそういう点では、小回りが効くのかもしれないですね。
刈田:家族経営で皆伐などもしている林業家さんが、山で伐り出しているところ、立派なケヤキが出てきて、それをそのままただのチップにするのだと勿体無い、でも、小野材木店さんに行っても、とても忙しくて何もできなくて終わることもある、とも聞いたことがあります。もし小野材木店さんに人手がもう少しあったら回るのかなとも考えてはいるんですけど。新しく何かを作るより、元ある資源を活用できるような仕組みや人手を町の方で支援してくれたらいいのかな、なんて思ったりしますね。
(2022年、丸森町、古書店スローバブックスにて行ったインタビューから抜粋したものです)
*A材 :木材を品質や用途によって分類した時の通称で、A材はその中で最も品質の高い材。A 材は直 材で建築用材、家具材など市場性が最も高い質材、B 材は小曲がり材で土木用材など、C 材は大曲がり材で集成材、合板用材、チップ材(製紙用・エネルギー用)など、D材は伐 採・造材の際に発生する端材でチップ材など利用価値が最も低い質材のことをいう。
(出典:https://www.city.saga.lg.jp/site_files/file/usefiles/downloads/s36827_20130704045514.pdf)