「家も家電製品と同じになってきちゃったんですね。要するにできたものを「買う」と。今「作る」って言わないでしょ?」
戦後の住宅需要と共に台頭した多くのハウスメーカーの存在や、手刻みと呼ばれるような木工の技術を持った大工が不要になってしまうプレカットの普及によって、家は「作る」ものから「買う」ものに変わってしまったと話す片山さん。「木は乾燥に時間がかかるが、田舎は広いんだから置いておけばいい」という言葉を実践するように、敷地内では30種類以上の材木を天然乾燥させています。現在では、大型のプレーナー(電動かんな)を持っていることから家具屋さんや材木店に製材を依頼されることもあるそうです。

話し手:片山鶴衛さん(以下片山) 聞き手:建築ダウナーズ(菊池、千葉、吉川)
◯家は「作る」ものから「買う」ものへ
片山:今ね、やっぱり概念がね、建築っていう概念が違うんだよね。家ってどう考えてます?みなさん。
吉川:そうですね....。確かに自分の祖父の家って、人の手で作った感じがすごく残っていて、木があらわになっている家だったんですけど、10年ぐらい前にその家を取り壊して、両親がいわゆるハウスメーカーで家を新築しました。綺麗ではあるんですが、ちょっと工業製品っぽいというか、そういうものになって。快適だけど、少しどこか不思議に思いながら、最近は過ごしていました。
片山:家も家電製品と同じになってきちゃったんですね。要するにできたものを「買う」と。今「作る」って言わないでしょ?
吉川:そうですね。
片山:昔はお客様が家を建てるって、普請(ふしん)するって言ったのだけど。そのために我々がお手伝いをするんだよね 。我々が建てるわけじゃないんだよ本来は。
吉川:言葉としても「施主」ですもんね。
片山:施主があくまでも基本で、お施主さんがどんな家にしたいのか、でも素人だから、技術者である我々がそのお手伝いをするっていうのが家なんだよね。だから皆さんのお住まいの、自分たちが思ってた、まあ100%とは行かないまでも、そういう家ができてきているわけよね。「こういう家が欲しい」「ああいう家が欲しい」と。今はメーカーさんが「はい、これに住みなさい」とね。逆にお客さんがそれに合わせて生活するみたいな。基本的に 全然違うんだよね。
吉川:そうですね 。
片山:メーカーさんは高いとか安いとかばっかし言うでしょ。あれはね、高いとか安いとかって言うのはおかしいんだよ。ベンツと軽トラ比べてさ、「ベンツ高い」って誰も言わないでしょ。使い道に合わせてんだよね。トランクとか頑丈に作ってとかさ。軽トラ何十台も買えるじゃないベンツだったら。でも買ってるんだよね。高いとか安いとかっていう以前の問題だと思うよね。物事って何でも値段で比べるけども。要するに「もので見る」っていう感覚が失われたんだよね。ものを見て適正に判断できるっていう感覚が。皆さん、もう失われてしまったんだよね。安いとか高いとかの問題じゃなくて、本当に欲しいものはこれ。 安くたっていらないものはいらないわけですから。
吉川:そうですね。
片山:たとえ高くても買えば、生活の、自分のためになる。その感覚が失われちゃったよね。だから100円ショップが流行っちゃった。
吉川:そうですね。
片山:だから人間の感性がね、失われてきたんじゃない?それとやっぱり住まいに対する、ハウスメーカーさんが戦後、要するに住む家がなくて、プレハブを早急に供給しなきゃいけないと、国の国策として行ったんだよね。それでハウスメーカーさんとか、プレハブが生まれたんだよね。ところがそれは、外国の真似をして作ったんだけど、外国は道路幅が広いし、トレーラーに乗って、ずーっ…と持っていけるわけさ。ところが日本は、それができないわけだ。だからちっちゃいのになっちゃってさ。本当にプレハブの安節になっちゃったんだよ。私も20代の頃はプレハブはみんなやったから。
菊池:え、そうなんですか、工事とか?
片山:工事とか、みんな施工店になってて。パナやったでしょ。パナ古かったから。松下。あれは古かった。あとミサワもやったよ。皆さん知らないだろうけど、東芝とか、フランスベッドまで住宅をやったんだから。
千葉:家電メーカーもプレハブを作ってたんですか?
片山:家電メーカーとかなんかじゃなくて、規模大きいでしょ、お金儲けの。それで皆さん、手を出したんだ安易に。住まいを研究しないで、箱だけ作っちゃったんだよ。で、フランスベッドなんか早々にやめたでしょ。で、技術要らないツーバイが出てきたでしょ。あれアメちゃんがほら、日本で宿舎作るのに、米軍の。ツーバイでやったんだよね。それを簡単だからって日本が真似しちゃったんですね。俺も20代の頃、プレハブの講習受けて免許持ってんだよ一応。ただ俺は、やんなかったけどね、でも仕事としては全部やったよ、ミサワから何から。ミサワを最後にやめて、本来の...本来のっていうのもおかしいけど、木造に移ったんだよね。
吉川:その辺りのお話を詳しくお聞きしたいです。
片山:ミサワって本当に大工さんを買い殺しだもんね。下請けの大工さん使ってんだよね。今も昔も同じでさ、本来は家作ってる大工さんなんだから、大工さんがもっと業績を伸ばすべきだよね。
吉川:なるほどそうすると作るだけの人になってしまって?
片山:うん。腕は良いんだよな、かんなかけたりとかさ。刻みとかさ、腕はいいよ確かに。他ではできないんだ。でも家を作るってのは、デザインね。いろんな要素が含まれてるのにさ、屋根のお寺のそれにしたって。あれをきちんとするのが棟梁なんだけど、まぁ早く家作るためにそういうことを省いて、刻みだけをさせちゃったでしょ。徒弟制度を無くしちゃったでしょ。そうすると木の見方を知らない人が木造やったら、木造が駄目だってことになるんだよね。
菊池:なるほど、腕がいい人がやればいいはずなのに?
片山:いや腕はいいんだよ。そうじゃなくて。デザインとかね木のことを本当は知ってやらないといけない。
◯丸太の買い付けと木を見る目
吉川:東建設さんは丸太の買い付けからされているってお聞きしたんですが、それって今は、すごく珍しいですよね?
片山:昔は当たり前だけど、今は珍しいわね。昔の材木屋さんって例えば、6畳間があるでしょ、6畳だと12尺と9尺だ。それで「12 尺と9尺の回り縁」って頼むわけだ。そうすっと、製材所が寄越すのは、同じ木から取った12 尺の木なわけです。目が揃うようにね。それが材木屋さんの仕事だった。安いとバラバラに寄越すのさ。それがもう、そう言う材木屋さんがいなくなったんだよね。材木屋さんが製材しなくなったから自分のところで。消費者になっちゃったんだ。伝票だけで、仕入れて売るみたい。外材(輸入材)はどんどん入ってきたから。そんなことをお構いなしさ。
菊池:なるほど、もう切ってあるのを買って、あと、それを売って
片山:まぁそれが嫌で、俺は丸太買いからね。そうすっと全部木が揃うわけさ、目も。綺麗だよね、全然。それはデザイン性とか色味とかだから。そういうことを気にする大工さんもいなくなってきたんだ。だからダサくなんだよね。
吉川:そうすると創業された時は、まだ材木屋さんから買ってた んですか?
片山:そうそう、とってた。
***
片山:木が割れるってみなさん聞いたことない?
千葉:乾燥していって、音が鳴るって言うことですか。
片山:割れる木選ぶから割れんだ。
千葉:なるほど。
片山:泥棒を雇うようなもんだ。それは人事課が悪いんだべ。木によってあるんだね。ある程度は、外れるかもしれないけど、うちでまだ割れたって話は、聞いたことない。今の住宅は、やっぱり戦後植えたのが間伐材を利用しろとかって始まったから、中に芯があるわけさ。硬いところ。だからこっちが先に乾燥するから割れてしまうんだよ。芯持は大抵割れるよ。芯去を使えばいい、関西は芯去だよ。こっちだけだよ芯持使ってるの。
菊池:芯去にするにはやっぱり太くしないといけないんですよね?
片山:そう。あんなに細くてね、揺らしたら割れる。ダメだろうな。 だから目の通ったやつで、やっぱりそういうのは見極める人がいないとさ。
菊池:そういう木って、宮城とかでもあるんですか?
片山:あるある。みんな、宮城でもどこでもいいんだよ木は。ただ同じ山でもさ、風の強いところはこう、揺れてっからね中割れしてるし。昔の建物は、製材じゃないんだよね。あとからだからね、ノコギリが出てきたの。昔はさ、楔とかでパンと割ったわけだ。そうすると目の通り割れっからさ。割れたら丈夫なワケさ。今はさ、この曲がった木でも、まっすぐ切っちゃうから弱くなるのさ。1本の木から、例えばこれだったら、目がこういう風になってたらすぐ折れるっちゃ。真っ直ぐだったらいいんだけどさ。んだけど、今関係ねえっちゃ。かたちがあればいいんだから。今の人はそういう木を使うから、割れる、曲がる、自分たちの目が悪いのに、木のせいにして。ハウスメーカーさんをそれをいいことに「大工さんやると木割れるよ」そんなことねぇんだから。でもそれを見極める大工さんが少ないからさ、メーカーさんをそれやらないのさ そのきちんとした大工さんも使えないもの。手間出したくないから。
吉川:木を見る目はどうやって培われたんですか?
片山:その人の感性だっちゃな。理屈じゃないよね。料理人だって、味見るのって感性でしょ。あれって理屈ある?
吉川:修行されていた期間みたいなのは、おありなんですか?
片山:修行はしたけども、5年なら5年。でもその時に全部覚えられるワケじゃないよね。そこで、自分の感性として、いろんなものを見たり、聞いたり。だから大工さんは、大工さんで、木もいろんなもの見なきゃいけないし。わたしらは、丸太買って最初は製材所に一緒に行って。一緒になってひいたから。そうすると製材所の人からも教えてもらえるから。木は博打だからね。中に何あるかわかんないんだから。すると同じ杉でも、柔いのもあるし、硬いのもあるし。杉だってね、100倍くらい違うからね、値段。2万から200万くらいまであるからね。魚と一緒!
一同:笑
片山:赤身と中トロと違うでしょ。一緒だよ。それを見分けるのが魚屋さんでしょ? でも今のスーパーのおっちゃんたち、見分けられないでしょ。それと同じ。木もちゃんと見分ける人がいて、適材適所に使うこと。うちも1軒のうちで10種類くらい使うことがあるよ。
吉川:そんなに使うんですね。
片山:今は杉だけでしょ。框にスギ使ったらすぐベロベロ減っちゃう。うちは 山桜だとか、イタヤカエデだとか、硬いの使ったりするし、敷居だって赤松の柾を使ったり。あれ今、敷居滑りって便利なのできちゃったから何でもいいってなってるでしょ。うちは使ってないから未だに。
千葉:そうなんですね。
片山:だからあれはもう便利だからさ。安く仕上げるためにはみんな。それを見る目もないから、木も集まりにくいでしょ。
***
菊池:色んな木の種類とかを使う場合に、どうやってその木を手に入れるんですか?実際に山とかに見に行かれるんですか?
片山:前はね、盛岡の材木市場に行ったんだ、原木市場だよ。でも今は行かないよね。でも今でもなるべく丸太を見て買ってる。だから30種類以上あるよ、ここに。
菊池:原木の丸太の状態で買ってきて?
片山:それで乾燥させて、製材所はまた別に頼んで。でもあれ50馬力必要なんだよ。あんなの自分んところでできないしね。それとやっぱり木っていうのは時間がかかるんだよ。山桜だと最低10年かかるから乾燥に。だから材木屋さんは嫌がるわけだ。使えるまでの乾燥期間が長いから。今は資本投下してすぐお金なんで。っていうかさ、資本主義ってそうなんだよね。俺はいつも在庫にしてるから税理士さんに怒られるんだけどさ(笑)
一同:笑
菊池:じゃあ外にある木材は、本当にいろんな種類とか大きさのものが積み重なっているんですね。
片山:でもほら、山桜とかさ、イタヤカエデとかさ、家1軒のうちで、少ししか使わないわけ。だから、だんだん溜まっていくわけだ。
一同:笑
片山:だからこんなに在庫があるのよ。でもね、今在庫があるから、突然来られてもすぐできるのよ。他では真似できないと思う。
千葉:その在庫してる分で住宅を建てるとしたら何頭ぐらい分くらいの木材があるんですか?
片山:結構あるよ。何軒かは建つくらい。ただほら、ものによってはね。家ってのは、やっぱり杉は一番多いからさ、柱とか。そういうのは、あんまり在庫がないです。乾燥時間が短くても、あれは使えるから。あと意外と杉は、材木屋さんも在庫してるからね。すぐ持って来られるから。
吉川:じゃあ広葉樹とかは?
片山:広葉樹はないのね。この赤松は一番厄介なんですよ。赤松今ないでしょ、松枯れで。赤松はね、切るタイミングだからまずは。特に 11月から1月しか伐られないのよ。そして挽かなきゃないのよ。虫入ってるから。皮に虫入ってるんだよ。こういう穴開くんだよ。ボロボロって一夜にして。幼虫が、わーっと落としてくる。だから皮は、剥がないといけない。でも皮を剥ぐとすぐに割れっから、荒取りするわけ。うちで例えば15cmに挽くでしょ、使うのに。そうすっとね、21cm、要するに7寸番で引くわけ。1回。そして秋まで日陰で乾かさなきゃいけない。そうすっと今度、またねじれっからね、松って。そしてまた5寸に挽き直すわけ。効率悪いでしょ?それも秋以降に使えるかどうかわかんないんだよ。だってお客さん来るかわかんないんだから!(笑)
一同:笑
片山:そういう面倒くさいことやってるわけ、うちは。
千葉:例えば、これ以上置いたら木材がダメになるとかは?
片山:100年、200年もつよ。 ただし、シートかけるのはする。
千葉:あれは雨の時だけかけてあるんですか?
片山:いつもかけてるんだけど、最初の製材したばかりはシートかけちゃだめ。山菜も、そのまま食べたら苦いでしょ。アク抜きするでしょ。梅でもそうだね。水にさらして少しアクを抜く。木もおんなじ。アクが出るんだね。クリなんか真っ黒いのが出る。
一同:あ〜!あれか!
(昨年、建築ダウナーズが丸森町で自伐型林業を営む刈田さんから購入したクリを屋外に置いておいたら、黒いアクがでていたのを思い出しての反応)
片山:それを抜いて、ある程度。全部は抜けないからある程度抜いてから、今度はシートかけて乾かす。
吉川:それってシートをかけないでずっと日が当たると良くないんですか?
片山:日が当たるところばっかり乾くから、割れるのさ。温度が上昇して割れるのさ。
菊池:カビが生えたりとかはないんですか?
片山:あるある、松なんかはすぐカビ生えるから。製材するでしょ。あの時、木の粉が出る。あの粉が原因でカビがはえる。だからみんな箒ではくんだよね。
菊池:カビ生えちゃったらどうするんですか?
片山:もう見えないとこならそのままだね。カビ生えないようにすると大変な労力だから皆さん嫌がる。だから使わないの。漂白剤もあるんだけどね。でも万能ではないから。それとシックハウスの人もいるから。 まぁ扱いが専門的なんですよ。だから材木屋さんは全国的に流通しないわけ。資本主義から行くと逆行してるからさ。でも、うちで建てた家、40年くらい経っても全然何も問題ないよ。
一同:へぇ〜。
(2023年、仙台市泉区、東建設にて行ったインタビューから抜粋したものです)