「集成材もそうですよね、まだそんなに年数が経ってないので、40年50年経ったときにどういう劣化が出てくるか、どういう良さが出てくるか。結局ボンドですからね。木材のグリーン材の良さは昔から何百年とあるわけですから」
知人の建築家に紹介してもらった木材製造会社 「くりこまくんえん」は、大きな工場を持地ながらも、一般の方にも少量で木材を販売したり、 必要に応じて設計者、住宅の依頼主と一緒に山に入って木を選んだりするなど、大口の顧客への販売のみならず、個別の需要に応じた事業を展開されています。一般的な材木に使われる接着剤や人工乾燥材の人体への健康被害を考慮した加工プロセスや、山の循環を考慮した活動など、木を伐って売るだけにとどまらない製材と販売、その工夫について、お話をお聞きしてきました。

話し手:森川輝雄さん(以下森川) 聞き手:建築ダウナーズ(菊池、千葉、吉川)
◯木の価格の変遷、昭和のピーク〜ウッドショック
菊池:森川さんはこちらで働かれてもう長いんですか?
森川:私はもう18歳の時から、この業界にいます。18歳の時は問屋さんにいたんです。
菊池:木材の問屋さん?
森川:そうです、新建材も扱ってる仙台の方の大きい問屋さんで、そこはもう退職したんですけど。そしてまた同じような問屋さんに勤めて。なのでここに入ってからは、私はまだそんなに経ってないんです。まあ延べにして12、3年ってとこですかね。震災前からですかね。
菊池:でも木材を扱ってる期間はすごく長いですね。
森川:長いですね。高校もそういう高校だったので。小牛田農林っていう。そこからずっとの流れです。もうこの商売しかわかんない。
菊池:プロですね。
森川:ただ長いってだけで。やってきたのはほとんど営業ですね。もうそれしかできなかったので、残念ながら(笑)
もうすぐ65なんで終わりなんですけども。あっという間ですね。若い人とお付き合いしてると気持ちも若くなっていいですね。
吉川:じゃあ木材の価格の変遷とかもずっと見てこられたってことですよね。
森川:あ、そうですね、今の価格は、昭和の50年くらいの価格じゃないですかね。やっと。
千葉:今までどんどん下がり続けてたのが、昭和50年頃の価格帯に戻った?
森川:昭和50年がピークだとするじゃないですか。だんだんと昭和から平成になって下がり続けて令和ってなって、ちょっと今ウッドショックで上がったっていう。やっとですよ!
千葉:それって立木価格は変わってないんですか?
森川:立木価格もその当時は下がってます。だから林業を仕事にする人がいなくなって山が荒れてきてるっていうことですね。木一本売って3000円とか、4000円の世界で、それ伐採するのに倍の値段がかかるという、誰もやる気が無くなりますよね。同級生で山持ってるの2人いるんですけど、やっぱり悩んでましたね。仕事に身が入らなくなったって。
菊池:海外の材とかが入ってくるからですか?
森川:そうです。
千葉:立木価格が決まるのは、最終的な値段が決まってから立木の価格が決まるんですか?
森川:立木をまず切るじゃないですか。3m、4mに切って、市場に持って行きますよね。そうすると市場で1立米いくらって値段がつくわけですよね。例えば今1立米、2万円とするじゃないですか。で、ウッドショックの前は1万2000円とか。だから1本は本当に2000円とか。木を切って、市場にトラックを頼んで運んで、売るじゃないですか。売ってもトラック代も出ない、運送費も出ない、伐採費も出ないんですね。今でこそトントンとは行かないまでもだんだん価格が追いついてきた感じで、だからもう少し高くてもいいんです。
結局建てる人に高くした分の負担は全部行くんですけど、それをやっていかないと山は持たなくて、荒地になっちゃいますから。お金の循環がないんですよ。
植林するじゃないですか、で、下刈りして、大きくなるように育てて、で、間伐して、いいものを作ろうってことで枝打ちするじゃないですか。節のないやつは高く売れるので、できるだけ節の少ないやつを作るために枝打ちをするんですね。全部それも手間ですよね。で、切って、前は馬で引いてきたりしましたけど、今は重機で引っ張ってくるじゃないですか。それだってみんなお金かかって。馬だって食べさせなきゃいけないのでね。今は経費はそういう風に色々かかるんだけども、懐にはなかなか入って来ないっていう。もう少し高くてもいいのかなって思いますね。山にすれば。
吉川:自分もお客さんと話してて、ウッドショックで木材の値段が上がっててとかって説明するんですけど、上がっているというよりも、適正な価格に戻ってるという捉え方もできるのだなと思いました。
◯グリーン材、AD材、KD材、燻煙材について
吉川:ホームページで拝見した図で気になったところがあって、工場から工務店に直接グリーン材が矢印で繋がれている箇所が意味するのはグリーン材のままで工務店さんが使うっていうよりは工務店さんの方で保管・乾燥をするということですか?
森川:いや、工務店さんの方で、グリーン材で使うって方もいらっしゃいます。高温乾燥をかけないで。 今うちの取引先では二社ありますね。ただ柱に関してはグリーン材じゃなくて、うちの燻煙した材を使ってもらってて、ていうのはやっぱりねじれとか色々不具合が出て来ますから。今仕上げがほとんどクロスじゃないですか。そうすると材が歪んでくるとクロスが割れて来ちゃったりしてくるので、それを少しでも減らすために。柱と間柱は乾燥材、そのほかは全部グリーン材。
千葉:梁とか、棟とか...
森川:そう、土台から始まって、けた梁とか、全部グリーン材。
千葉:それでできるんだったらそれもいいっすよね。
森川:昔は全部それだったからね。なんの不具合もなかったんです。まあそれもお客さんに対しての説明が第一条件ですけどね。先ほどいったみたいに、ピキピキ音がしてくるのは丈夫になってくるからだからね、とか一言付け加えたりだとか。
私らも、製材工場としてはグリーン材で出せるのが一番いい出荷の方法なんですね。乾燥の電気代、燃料代かかんないってのもありますから。昔の材木屋さんの一番理想としてる出荷ですよね。
宮城県での取引先が少ないので、たまたま2社さんということですけど、もう少し歩けば、もう少しあるかもわかんないですよね、グリーン材でやってる方も。
菊池:取引先が少ないっていうのはそもそも燻煙の認知度が低いっていうことなんでしょうか?
森川:うちの方の出荷から言ったら少ないですね。でも、認知が低いというよりも、結局KD材がそれほど普及してるじゃないですか。燻煙材っていうのは、コストがどうしてもちょっと高くなるんですよ。出荷までに時間が必要になってくるので。その点で、早く手に入って乾燥していて一番使いやすいKD材にやっぱり皆さん行っちゃうんですよね。やっぱりどこでも扱えるっていうのがありますから。燻煙材っていうのは100人きたら、100人納めるってわけじゃないんですよ。うちとの考え方とある程度合ってないと、ただ燻煙使ってやるよっていうのではダメなんですよね。自然素材を大事にして、お客さんのためにも安心安全な材料を使いたいっていうのがあれば、初めて我々も、あ、じゃあ一緒にうちの材料使っていただけますかってできるんですけど。今ウッドショックで材料がちょっと足んないから、栗駒さんちょっと出してって言われるのとはちょっと違くて、お断りはしてましたね。やっぱり合わないとダメですからね。クレームの対象にもなっちゃいますからね。割れた、カビ生えたっていうのが、一番裁判で多いんですね。ある程度そのことを理解していただかないと。本当に信頼関係ですね。
◯困りごととエネルギー について
菊池:今ウッドショックってお話も出ましたけど、最近(※本インタビューは2022年に実施されました)の状況を受けて困っていることというか、懸念していることなどはありますか?
森川:やっぱりウッドショックは一番なんですけど、輸入材、合板が入って来ないっていうのはありますよね。ホームセンターにはあるみたいなんですけど、一般の市場さんとか、我々のような、木材市場さんとか、問屋さんにもなかなか入ってこなくて。で、今多いのが機械加工、プレカット加工が多いんですよ。ていうのは、合板まで全部出してくれるんですよ。いやって言わないで。それは必ず出さないといけないものなので。お客さんもそれを知っているので、本来であれば手刻みでやる仕事を、もう機械加工で、プレカットで全部やるっていう、合板も含めてってことでやってるのが多いですね。で、我々にも依頼がくるんですけど、我々は(ボンドなど化学製品を使用する)合板を扱わないってことになってるじゃないですか。まあ、石巻で作ってる合板、あれは杉と松なので、あれはいいんですけど、ただ値段が高い。我々が扱うときはそれしか扱えないので。ラワンとかは扱えないので、それはお断りしてるんですけど。いい面もあるし、悪い面もありますね、なかなか合板が入って来ないっていうのは。
で、あとは電気代ですね。第二電電とかあるじゃないですか、安いからって、うちもそうなんですけど。やっぱり電気の供給が、できなくなってきてるわけですよね。東北電力にまた変えるって言った場合もなかなか電力の方でもうんと言わないので。
菊池:電力の供給が十分にできない状況...
森川:ですね。まあそもそも作ってるのは一箇所ですからね、東北電力、東京電力で作ってるじゃないですか、(第二電電などの会社は)そっから分けてもらってるわけですよね、その分けてもらってるところの値段が高くなったら、全部こちらに来るわけですから。うちは結構全部電気でやってるので結構な金額になってきますよね。
まああとは、輸入の燃料ですよね、ガソリンも含めて。そういうのは我々の悩みですよね。コストを下げようにも下げられないですね。で、丸太も今輸入材が入って来ないので、用材が高くなってるじゃないですか。合板に使う丸太が高いのでみんな引っ張られて。我々が買うのも結構高いわけですよね、なかなか自社で切ればいいっていうのもみなさん思われるかもしれないけど、なかなか自社でも重機とか色々な経費がかかるので。買ったほうが安いかなと。 合板については、石巻で作ってる杉の合板にしても、丸太が高くなれば結局それを使ってる製品にみんななるじゃないですか。結局それを買わなきゃいけないので。びっくりするくらいみんな高いですね。1週間で値段が違ってきますからね。一番いいのは無垢材の家の材料で、屋根板とか、下地材も(合板ではなく)無垢でみんな使ってくれれば我々としては一番いいんですけどね。
千葉:どうしても合板を使ってしまいますよね。
森川:まあ早いんですよね。加工までしてくれるし。ただ、そういう床下地材とか、屋根板とか、あれをうちの取引先は使ってるので。うちでは合板は使ってないので、まだいいんですけどね。屋根板とかも一挙に無垢材が使われなくなったら、今あるやつはみんな燃料にしきゃならなくなるんで、あの木酢につけたやつね。それはそれで困るなって思ってますけどね。でも無垢の屋根板の方が持つんですよね。合板は湿気に弱いので。
千葉:合板はどんどんブヨブヨしていくだけですからね。
森川:ですね。うちの古いうちなんかそうだったんですけど、流しの下なんかね、やっぱりフロアも合板でブヨブヨになっちゃいましたね。
菊池・千葉:うちもですね...
森川:みんな悩みの種ですよね。根太、大引(おおびき)から直さなきゃいけなかったりしてね(笑)
***
森川:私今、大崎の技術専門校で大工さんの卵さんたち、生徒さんがうちの方に研修に来られるんですよ。年に3回。伐採、下刈り、工場っていうふうな流れをね。で、うちの方の材料使ってもらって。実際作業してもらいますからね、みなさん使ってる材料は実際こういう工程でなるんですよっていうことを話するんですよ。やっぱり今まで漫然と準備されてきたものを切って、勉強するんですけど。切って繋いでっていう作業だけだったのが、実際みて、触ってもらうとね、あの時切ったみたいに、こういう風になるのに随分手間かかるんだなって思ってもらえれば、こういうのでも、ぽいっていう風にはしないと思うんですね。大事に使ってもらえると思うので。それはそれで大事な我々の使命として大事なんだなとね。だからそういう取り組みをさせていただいて今本当に良いです。
(2022年、栗原市、株式会社くりこまくんえん(当時)にて行ったインタビューから抜粋したものです)